オペレヴィ・ヴィクセ

ユークリッドの『原論』を少しずつ読んでいくブログです。タイトルは「Q.E.D.」の元になったギリシャ語の「όπερ έδει δείξαι.」。

第1巻命題17 三角形の二角の和

すべての三角形において、どの二角をとってもその和は二直角より小さい。 

 

「三角形の三つの内角の和は二直角である」ということを我々は知っている。今回の命題は、それよりも弱い定理だ。

前回同様、今回もまた、中途半端な命題である。『原論』にはもちろん三角形の内角の和が二直角であることは登場するのだが、それはやはり命題32にならないと出てこない。

 

三角形ΑΒΓがあり、辺ΒΓを点Δまで伸ばそう*1

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このとき、角ΑΒΓ角ΑΓΒの和が二直角より小さいことを示す。

角ΑΓΔは外角なので、内対角ΑΒΓより大きい*2

そこで双方に角ΑΓΒを足すと、二角ΑΓΒΑΒΓの和は、二角ΑΓΒΑΓΔの和より小さい*3。ところが二角ΑΓΒΑΓΔの和は二直角に等しい*4。したがって二角ΑΓΒΑΒΓの和は二直角より小さい。

同様にして、二角ΒΑΓ、ΑΓΒの和も、二角ΓΑΒ、ΑΒΓの和も、二直角より小さいことを証明しうる。

よってすべての三角形において、どの二角をとってもその和は二直角より小さい。これが証明すべきことであった。

 

数式で書けば以下の通り。

角ΑΒΓ角ΑΓΔ(∵命題16)
ゆえに 角ΑΓΒ角ΑΒΓ角ΑΓΒ角ΑΓΔ=二直角(∵命題13)

 

今回の命題は、第1巻の後半で上位互換「三角形の内角の和は二直角」が登場する。

上位互換の証明には平行線の性質を使うのだが、その性質の証明には、あの平行線公準が必要になる。

stoixeia.hatenablog.com

どうやらユークリッドは、平行線公準を使う必要のある命題は、なるべく後ろの方で出したかったらしい。この背景には、「もしかしたら平行線公準は他の公準から証明可能かもしれない」というユークリッドの憂慮があったと考えられている。

 

 

*1:公準2「有限直線を連続して一直線に延長すること」

*2:命題16「すべての三角形において、辺のひとつが延長されるとき、外角は内対角のいずれよりも大きい」

*3:公理4「不等なものに等しいものが加えられれば全体は不等である」

*4:命題13「もし直線が直線の上に立てられて二つの角を作るならば、二つの直角か、またはその和が二直角に等しい角を作るであろう」