もし二つの三角形において、二辺が二辺にそれぞれ等しく、底辺が底辺より大きいならば、等しい線分に挟まれる角も一方が他方より大きいであろう。
『原論』の第1巻は、全部で48個の命題がある。つまり、今回から「後半」がスタートする。後半の方が複雑な命題が多いので、気を引き締めて読んでいこう。
とはいえ、今回は簡単だ。今回の命題は、前回の命題の逆である。
前回は角が大きければ底辺も大きいという話だったが、今回は底辺が大きければ角も大きいという話だ。
二つの三角形ΑΒΓ、ΔΕΖがあり、ΑΒ=ΔΕ、ΑΓ=ΔΖ、そして底辺ΒΓ>底辺ΕΖとする。
(ΑΒ=ΔΕ、ΑΓ=ΔΖ、ΒΓ>ΕΖ)
このとき、角ΒΑΓが角ΕΔΖより大きいことを示す。
証明は背理法を使う。大きくないとすると、等しいか小さいかのどちらかである。場合分けして考えよう。
まず角ΒΑΓと角ΕΔΖが等しいとき。
この場合、二つの三角形は二辺が二辺に等しく、それらに挟まれる角も等しいため、底辺ΒΓも底辺ΕΖに等しいことになる*1。しかし、いま底辺は等しくない。ゆえに角ΒΑΓと角ΕΔΖは等しくない。
次に、角ΒΑΓが角ΕΔΖより小さいとき。
この場合、角ΕΔΖが角ΒΑΓより大きいわけだが、前回の命題24から、底辺ΕΖが底辺ΒΓより大きいことになる*2。しかし、そうではない。ゆえに角ΒΑΓは角ΕΔΖより小さくない。
以上から、角ΒΑΓは角ΕΔΖに等しくも小さくもないことが示された。ゆえに角ΒΑΓは角ΕΔΖより大きい。
よって、もし二つの三角形において、二辺が二辺にそれぞれ等しく、底辺が底辺より大きいならば、等しい線分に挟まれる角も一方が他方より大きいであろう。これが証明すべきことであった。
前回に比べ、はるかに簡単な証明だ。補助線もない。突っ込みどころも特にないだろう。
特に書くこともないので、今回はここまで。