オペレヴィ・ヴィクセ

ユークリッドの『原論』を少しずつ読んでいくブログです。タイトルは「Q.E.D.」の元になったギリシャ語の「όπερ έδει δείξαι.」。

第3巻命題11 内接する二円の中心を結ぶ線分

もし二つの円が内側で互いに接し、それらの中心がとられるならば、それらの中心を結ぶ線分は延長されて円の接点におちるであろう。

 

命題6で、二つの円が接する場合、同じ中心を持たないことを示した。

stoixeia.hatenablog.com

 

今回は、それらの異なる中心を結ぶ線分は、円の接点を通ることを示す。なお今回の命題11は「内側で」接する円について論じるが、次の命題12では「外側で」接する円について論じる。

 

さて、二円ΑΒΓΑΔΕが内側で接し、その接点をΑとする。そして、円ΑΒΓの中心Ζと、円ΑΔΕの中心Ηがとられたとする*1

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このとき、二点Ζ、Ηを結ぶ線分を延長すると*2*3、点Αに落ちることを示そう(上図では明らかに落ちていないが、これはわざとこのようにしている)。

証明は背理法で行う。

点Θを円ΑΒΓ上の点とすると、これは円ΑΔΕの外部の点である。線分ΖΗΘが引けたとし、ΑΖΑΗを結ぶ*4

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すると、二線分ΑΗΗΖの和は、線分ΖΑより大きい*5。そして、線分ΖΑは線分ΖΘに等しい。ともに円ΑΒΓの半径だからである*6。従って、二線分ΑΗΗΖの和は、線分ΖΘより大きい。

双方から線分ΗΖを引き去ろう。すると、残りの線分ΑΗは、残りの線分ΗΘより大きい。ところが、線分ΑΗは線分ΗΔに等しい。ともに円ΑΔΕの半径だからである*7。したがって、線分ΗΔも線分ΗΘより大きい。しかし、点Θは円ΑΔΕの外部の点なので、線分ΗΔは線分ΗΘよりも小さい*8。すなわち、小さいものが大きいものよりも大きくなる。これは不可能である。

したがって、二点Ζ、Ηを結ぶ線分は、円ΑΔΕの外部に落ちない。ゆえに、点Αにおいて二円の接点に落ちる。

よって、もし二つの円が内側で互いに接し、それらの中心がとられるならば、それらの中心を結ぶ線分は延長されて円の接点におちるであろう。これが証明すべきことであった。

 

 

この証明の肝は、第1巻命題20で証明した「三角形の二辺の和は、他の一辺より大きい」である。

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円に関する証明であるが、三角形の性質を利用している。円なのに三角形が出てくるのが面白い。

「三角形の二辺の和は、他の一辺より大きい」は、サインコサインと並んで、数学批判のときに槍玉にあがりやすい代物である。いわく、「そんなことは犬でもわかる」とのことだ(この命題は、「遠回りするよりまっすぐ進んだ方が近い」という意味である)。

しかしこの命題を使えば、「内接する二円の中心を結ぶと、接点に落ちる」という、あまり自明でない事柄が示せる。一見役立たなさそうな定理だが、こんなところで役に立つのだ。

次の命題12でも、ほとんど同じ方法で証明を行う。*9

 

 

*1:命題3-1「与えられた円の中心を見出すこと」

*2:公準1「任意の点から任意の点へ直線をひくこと」

*3:公準2「有限直線を連続して一直線に延長すること」

*4:公準1「任意の点から任意の点へ直線をひくこと」

*5:命題1-20「すべての三角形において、どの二辺をとってもその和は残りの一辺より大きい」

*6:定義1-15「円とは一つの線に囲まれた平面図形で、その図形の内部にある一点からそれへ引かれたすべての線分が互いに等しいものである」

*7:定義1-15「円とは一つの線に囲まれた平面図形で、その図形の内部にある一点からそれへ引かれたすべての線分が互いに等しいものである」

*8:公理8「全体は部分より大きい」

*9:(2019/01/26追記)と思ったが、そうでもなかった。