オペレヴィ・ヴィクセ

ユークリッドの『原論』を少しずつ読んでいくブログです。タイトルは「Q.E.D.」の元になったギリシャ語の「όπερ έδει δείξαι.」。

第1巻命題20 三角形の二辺の和

すべての三角形において、どの二辺をとってもその和は残りの一辺より大きい。 

 

中学校の1年だったか2年だったか忘れたが、こんな問題がテストで出たことがある。

次のうち、三角形が作れる辺の組をすべて答えなさい。

(1) 3cm, 4cm, 5cm (2) 2cm, 4cm, 8cm (3) 4cm, 8cm, 8cm

答えは(1)と(3)で、(2)は三角形を作れない。その理由は、2と4の和が8より小さいからである。ある二辺の和が残りの一辺より小さい三角形は、存在しえないのだ(これは今回の命題の対偶である)。

 

では証明をしよう。三角形ΑΒΓにおいて、どの二辺をとってもその和は他の一辺より大きいことを示す。ひとまず、ΒΑ、ΑΓの和がΒΓより大きいことを示そう。

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ΒΑを延長し*1、そこからΑΓに等しい線分ΑΔを切り取り*2、ΔΓを結ぶ*3

f:id:kigurox:20171130152524p:plain(ΑΓ=ΑΔ)

すると、三角形ΑΓΔは二等辺三角形なので、角ΑΔΓも角ΑΓΔに等しい*4。このとき、角ΒΓΔは角ΑΓΔより大きいので、角ΑΔΓよりも大きい。三角形において、大きい角には大きい辺が対するので、辺ΒΔは辺ΒΓより大きい*5

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ところが、辺ΑΔはΑΓに等しいのだった。ゆえに、辺ΒΔは、二辺ΒΑ、ΑΓの和に等しい。しかも辺ΒΓより大きい。したがってΒΑとΑΓの和は、ΒΓより大きい。

同様にして、ΑΒ、ΒΓの和もΓΑより、ΒΓ、ΓΑの和もΑΒより大きいことを証明しうる。

よって、すべての三角形において、どの二辺をとってもその和は残りの一辺より大きい。これが証明すべきことであった。

 

先にΒΔがΒΓより大きいことを示した後、「実はΒΔはΒΑとΑΓの和に等しい」と明かす証明だ。中学のときも、同様の方法で証明を教わった記憶がある。あれは『原論』の説明をそのまま引用していたのだ。

 

今回の命題は、「三角形の一辺は、他の二辺の和より小さい」ということであり、平たく言えば「回り道するよりまっすぐ行った方が近い」という意味だ。

どこかの誰かが、「そんなことは犬でも知ってる」と言ったそうだ。たしかに直感的には明らかだが、直感的に明らかなことを論理的に証明してしまうところが『原論』の魅力である。

 

 

*1:公準2「有限直線を連続して一直線に延長すること」

*2:命題3「二つの不等な線分が与えられたとき、大きいものから小さいものに等しい線分を切り取ること」

*3:公準1「任意の点から任意の点へ直線をひくこと」

*4:命題5「二等辺三角形の底辺の上にある角は互いに等しく、等しい辺が延長されるとき、底辺の下の角は互いに等しいであろう」

*5:命題19「すべての三角形において、大きい角には大きい辺が対する」