すべての三角形において、どの二辺をとってもその和は残りの一辺より大きい。
中学校の1年だったか2年だったか忘れたが、こんな問題がテストで出たことがある。
次のうち、三角形が作れる辺の組をすべて答えなさい。
(1) 3cm, 4cm, 5cm (2) 2cm, 4cm, 8cm (3) 4cm, 8cm, 8cm
答えは(1)と(3)で、(2)は三角形を作れない。その理由は、2と4の和が8より小さいからである。ある二辺の和が残りの一辺より小さい三角形は、存在しえないのだ(これは今回の命題の対偶である)。
では証明をしよう。三角形ΑΒΓにおいて、どの二辺をとってもその和は他の一辺より大きいことを示す。ひとまず、ΒΑ、ΑΓの和がΒΓより大きいことを示そう。
ΒΑを延長し*1、そこからΑΓに等しい線分ΑΔを切り取り*2、ΔΓを結ぶ*3。
(ΑΓ=ΑΔ)
すると、三角形ΑΓΔは二等辺三角形なので、角ΑΔΓも角ΑΓΔに等しい*4。このとき、角ΒΓΔは角ΑΓΔより大きいので、角ΑΔΓよりも大きい。三角形において、大きい角には大きい辺が対するので、辺ΒΔは辺ΒΓより大きい*5。
ところが、辺ΑΔはΑΓに等しいのだった。ゆえに、辺ΒΔは、二辺ΒΑ、ΑΓの和に等しい。しかも辺ΒΓより大きい。したがってΒΑとΑΓの和は、ΒΓより大きい。
同様にして、ΑΒ、ΒΓの和もΓΑより、ΒΓ、ΓΑの和もΑΒより大きいことを証明しうる。
よって、すべての三角形において、どの二辺をとってもその和は残りの一辺より大きい。これが証明すべきことであった。
先にΒΔがΒΓより大きいことを示した後、「実はΒΔはΒΑとΑΓの和に等しい」と明かす証明だ。中学のときも、同様の方法で証明を教わった記憶がある。あれは『原論』の説明をそのまま引用していたのだ。
今回の命題は、「三角形の一辺は、他の二辺の和より小さい」ということであり、平たく言えば「回り道するよりまっすぐ行った方が近い」という意味だ。
どこかの誰かが、「そんなことは犬でも知ってる」と言ったそうだ。たしかに直感的には明らかだが、直感的に明らかなことを論理的に証明してしまうところが『原論』の魅力である。