オペレヴィ・ヴィクセ

ユークリッドの『原論』を少しずつ読んでいくブログです。タイトルは「Q.E.D.」の元になったギリシャ語の「όπερ έδει δείξαι.」。

第3巻命題5 交わる二円の中心

もし二つの円が互いに交わるならば、それらは同じ中心を持たないであろう。

 

まあ、そりゃそうだろう、という命題である。中心が同じ円、つまり同心円同士は、どう考えても交わらない。つまり交わるならば、同心円ではない。

直感的には明らかであるが、『原論』ではしっかりと証明する。当ブログで再三述べている通り、これこそが『原論』の魅力のひとつである。

 

証明は背理法で行う。

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二円ΑΒΓとΓΔΗが、点Β、Γで交わっているとする。このとき、二円が同じ中心を持つと仮定し、その中心をΕとする。そしてΕΓを結び*1、任意にΕΖΗを引く。

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すると、点Εは円ΑΒΓの中心なので、ΕΓはΕΖに等しい*2。また、点Εは円ΓΔΗの中心でもあるため、ΕΓはΕΗに等しい*3

ともにΕΓに等しいので、ΕΖとΕΗは互いに等しい*4。従って小さいものが大きいものに等しくなるが、これは不可能である*5。ゆえに点Εは、二円ΑΒΓ、ΓΔΗの中心ではない。

よって、もし二つの円が互いに交わるならば、それらは同じ中心を持たない。これが証明すべきことであった。

 

シンプルな証明である。とはいえ、こんな当たり前なことでもきちんと証明できるという事実には、ちょっと感動する。

ところでこの証明をよく読むと、証明に利用される交点はひとつだけである。つまり、二円が交わる点の個数は、ひとつ以上ならいくつでもいいことになる。

実際、次回の命題6では、二円が接する(つまり交点がひとつ)ならば中心が異なることを、今回と全く同じ方法で証明する。なら命題5と6はひとまとめにしても良さそうだが、おそらくユークリッドは、「交わる」と「接する」は別物だととらえていたのだろう。

なお今回の証明では、二円は二点で交わることが仄めかされている。しかし、二円が二点でのみ交わることは、まだ証明されていない。そのことは、命題10で証明する。

ただし上述の通り、仮に二円が三点以上で交わったとしても、今回の証明にはなんら影響しない。

 

次回は「二円が接するならば、それらは同じ中心を持たない」ことを今回と全く同じ方法で証明するので、今回の復習がしたい人は、次のページを読む前に自力でこの命題を証明してみると良いだろう。いわゆる宿題である。

 

 

*1:公準1「任意の点から任意の点へ直線をひくこと」

*2:定義1-15「円とは一つの線に囲まれた平面図形で、その図形の内部にある一点からそれへ引かれたすべての線分が互いに等しいものである」

*3:定義1-15「円とは一つの線に囲まれた平面図形で、その図形の内部にある一点からそれへ引かれたすべての線分が互いに等しいものである」

*4:公理1「同じものに等しいものはまた互いに等しい」

*5:公理8「全体は部分より大きい」