すべての平行四辺形において、対角線を挟む二つの平行四辺形の補形は互いに等しい。
「補形」という言葉は、現代ではほとんど見かけない。しかし定義に登場していないので、当時は一般的な用語だったのかもしれない。ユークリッドは、あまりに一般的な単語は定義し忘れていることがあるのだ。
補形とは、次のようなものだ。平行四辺形に対角線を一本引き、各辺に平行な線分を、対角線上で交わるように引く。
(ΑΔ // ΕΖ // ΒΓ、ΑΒ // ΘΗ // ΔΓ)
このとき、対角線が通過している二つの四角形ΑΕΚΘ、ΚΗΓΖのことを、「対角線を挟む平行四辺形」と呼ぶ。そして元の平行四辺形から、これらを除いて残る四角形ΕΒΗΚ、ΘΚΖΔのことを「補形」と呼ぶ。念のため付け加えておくと、補形は平行四辺形になる。対辺がすべて平行だからだ。
(2018/03/17追記)本によっては、「対角線を挟む平行四辺形」を「対角線の周りの平行四辺形」と訳していたりする。当ブログでは、参考文献[1]の訳に準じることにする。
それと『原論』ではこの先、平行四辺形ΑΒΓΔを、平行四辺形ΑΓなどと書くことが増える。つまり一組の対角だけで表現するのだ。カッコいいので、当ブログでも今後、時々そのように書くことにしよう。
今回の命題は、平行四辺形の補形が互いに等しいと主張している。早速証明しよう。
平行四辺形ΑΒΓΔは対角線ΑΓによって二等分されるので、三角形ΑΒΓは三角形ΑΓΔに等しい*1。
また、平行四辺形ΕΘも対角線ΑΚによって二等分されるので、三角形ΑΕΚは三角形ΑΚΘに等しい*2。同様に、三角形ΚΗΓも三角形ΚΓΖに等しい。
ゆえに二つの三角形ΑΕΚとΚΗΓの和は、二つの三角形ΑΚΘとΚΓΖの和に等しい*3。しかも三角形ΑΒΓ全体は三角形ΑΓΔ全体に等しいので、これらの和を除いた残りの補形ΒΚも残りの補形ΚΔに等しい*4。
よってすべての平行四辺形において、対角線を挟む二つの平行四辺形の補形は互いに等しい。これが証明すべきことであった。
いきなり「補形は等しい」と言われてもなかなか信じられないが、三枚目の画像を見ればほぼ自明に思えるのではなかろうか。
今回の命題は、次回再び平行四辺形を作図するときに、肝となる命題して登場する。 また第2巻でもちょくちょく登場するので、覚えておいてほしい。