オペレヴィ・ヴィクセ

ユークリッドの『原論』を少しずつ読んでいくブログです。タイトルは「Q.E.D.」の元になったギリシャ語の「όπερ έδει δείξαι.」。

第3巻命題4 中心を通らない二つの弦

もし円において中心を通らない弦が互いに交わるならば、互いに二等分しない。 

 

前回は、「中心を通る弦が、中心を通らない弦に直角に交わるならば、後者を二等分する」という内容だった。

stoixeia.hatenablog.com

今回は、双方とも中心を通らない場合の話である。双方が中心を通らないならば、双方がともに二等分されることはないと主張している。

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証明は背理法で行う。円ΑΒΓΔにおいて、中心を通らない二つの弦ΑΓ、ΒΔが、中心でない点Εで交わっているとする。このとき、点Εが、二つの弦ΑΓ、ΒΔをともに二等分していると仮定する。

円ΑΒΓΔの中心Ζをとり*1、ΖΕを結ぶ*2

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すると、中心を通る線分ΖΕが、中心を通らない弦ΑΓを二等分するから、それをまた直角に切る*3。すなわち、角ΖΕΑは直角である。

同様に、線分ΖΕは弦ΒΔも二等分するから、やはりそれを直角に切る*4。すなわち、角ΖΕΒは直角である。

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すべての直角は互いに等しいので*5角ΖΕΑ角ΖΕΒに等しい。すなわち、小さいものが大きいものに等しい*6。しかしこれは不可能である。ゆえに、ΑΓ、ΒΔは互いに二等分しない。

よって、もし円において中心を通らない二つの弦が互いに交わるならば、互いに二等分しない。

 

あっさりとした証明である。

なお、今回の命題は「互いに二等分しない」と言っているので、片方なら二等分するかもしれない。実際、弦の位置をうまくとれば、二等分できる。

f:id:kigurox:20180709232819p:plain(ΒΕ=ΕΔ)

しかし、二本の弦を同時に二等分はできない、というのが今回の主張である。

 

今回の命題は「互いに二等分しない」という否定の形の命題であった。ちゃんと調べたわけではないが、『原論』では珍しいタイプの命題ではなかろうか。これまでのところでは、第1巻命題7のみが否定形の命題である。

stoixeia.hatenablog.com

 

今回の命題は、どのように使えるのであろうか。否定の形の命題であるから、背理法を使う場面で利用されたのだろうか?

参考文献[3]第1巻286頁には、この命題について次のように書かれている。

命題3は繰り返し利用されるが、命題4は『原論』で利用例がなく、その意義は不明である。 

残念な話である。

 

 

*1:命題3-1「与えられた円の中心を見出すこと」

*2:公準1「任意の点から任意の点へ直線をひくこと」

*3:命題3-3「もし円において、中心を通る線分が中心を通らない弦を二等分するならば、それをまた直角に切る。そしてもし直角に切るならば、それをまた二等分する」

*4:命題3-3「もし円において、中心を通る線分が中心を通らない弦を二等分するならば、それをまた直角に切る。そしてもし直角に切るならば、それをまた二等分する」

*5:公準4「すべての直角は互いに等しいこと」

*6:公理8「全体は部分より大きい」