オペレヴィ・ヴィクセ

ユークリッドの『原論』を少しずつ読んでいくブログです。タイトルは「Q.E.D.」の元になったギリシャ語の「όπερ έδει δείξαι.」。

第1巻命題46 正方形の作図

与えられた線分上に正方形を描くこと。 

 

前回までに比べ、非常に簡潔で簡単な命題である。

こんな後ろの方に来て、突然こんな簡素な命題が登場するのは何とも不思議だが、これは次の命題47「ピタゴラスの定理」のために必要不可欠だったからだろう。それでいて他の命題には不要なので、これより以前に登場させるのも、話の順番的に不適切だと考えたのかもしれない。

 

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図のように線分ΑΒが与えられたとき、この上に正方形を作図したい。

まず点Αを通りΑΒに垂直な直線ΑΓを引き*1、ΑΔをΑΒに等しくする*2

f:id:kigurox:20180216162743p:plain(ΑΒ⊥ΑΓ、ΑΒ=ΑΔ)

次に点Δを通りΑΒに平行な直線と、点Βを通りΑΔに平行な直線を引き、交点をΕとする*3

f:id:kigurox:20180216163318p:plain(ΔΕ // ΑΒ、ΒΕ // ΑΔ)

このとき、四角形ΑΔΕΒが求める正方形である。証明しよう。そのためには、四辺が等しく、四角がすべて直角であることを示せばよい。

まず、対辺が互いに平行であることから、ΑΔΕΒは平行四辺形である。そして平行四辺形の対辺は互いに等しいので、ΑΒはΔΕに、ΑΔはΒΕに等しい*4。しかもΑΒはΑΔに等しいので、結局、四辺ΑΒ、ΒΕ、ΕΔ、ΔΑは互いに等しい*5

次に、平行線ΑΒ、ΔΕに線分ΑΔが交わっていることから、同側内角ΒΑΔ、ΑΔΕの和は二直角に等しい*6。しかも角ΒΑΔは直角なので、角ΑΔΕも直角である*7*8。そして平行四辺形の対角は互いに等しいので、これらの対角ΔΕΒ、ΕΒΑもいずれも直角である*9

ゆえに四角形ΑΔΕΒは、等辺で方形の平行四辺形である。よってそれは正方形である*10。そして線分ΑΒの上に描かれている。これが作図すべきものであった。

 

私が「線分ΑΒ上に正方形を作図せよ」と言われたら、特に何も考えずにこの命題の通りに作図するだろう。中学生に問うても同じようにするに違いない。

ただ、意外とその証明は回りくどいんだな、という印象を受けた。もちろん「証明せよ」と言われたら、たぶん私もこれとほぼ同じ証明をするのだが、今まで真面目にこの証明を考えたことがなかった。私はどうやら、直感的に作図していたようだ。

 


 

作図の冒頭で、線分ΑΒに垂直で、点Αをと通る直線ΑΓを作図した。

これは命題11「直線上の点を通る垂線」を利用しているが、この作図は線分の中途の点に垂線を下すことはできても、線分の端点に垂線を下すことはできない。実際に作図する際は、公準2「線分を延長すること」で線分ΑΒを延長する必要がある。

stoixeia.hatenablog.com

 


 

今回の証明から、正方形は平行四辺形の一種であることがわかる。少なくとも、この方法で描かれる図形には、正方形と平行四辺形の両方の性質がある。

冒頭で予告した通り、この命題は次回、ピタゴラスの定理を証明する際に登場する。そしてその中で、正方形が平行四辺形の性質を持つことが利用される。

 

 

*1:命題11「与えられた直線にその上の与えられた点から直角に直線を引くこと」

*2:命題3「二つの不等な線分が与えられたとき、大きいものから小さいものに等しい線分を切り取ること」

*3:命題31「与えられた点を通り、与えられた直線に平行線を引くこと」

*4:命題34「平行四辺形において、対辺および対角は互いに等しく、対角線はこれを二等分する」

*5:公理1「同じものに等しいものはまた互いに等しい」

*6:命題29「一つの直線が二つの平行線に交わって成す錯角は互いに等しく、外角は内対角に等しく、同側内角の和は二直角に等しい」

*7:公準4「すべての直角は互いに等しいこと」

*8:公理3「等しいものから等しいものが引かれれば、残りは等しい」

*9:命題34「平行四辺形において、対辺および対角は互いに等しく、対角線はこれを二等分する」

*10:定義22「四辺形のうち、正方形とは等辺でかつ角が直角のもの、矩形とは角が直角で等辺でないもの、菱形とは等辺で角が直角でないもの、長斜方形とは対辺と対角が等しいが等辺でなく角が直角でないものである。これら以外の四辺形はトラペジオンと呼ばれるとせよ」