オペレヴィ・ヴィクセ

ユークリッドの『原論』を少しずつ読んでいくブログです。タイトルは「Q.E.D.」の元になったギリシャ語の「όπερ έδει δείξαι.」。

第1巻命題42 三角形に等しい平行四辺形の作図[角を与えられた場合]

与えられた直線角の中に与えられた三角形に等しい平行四辺形を作ること。 

 

命題31以来の作図題だ。あまり学校では見かけないタイプの作図のような気がする。

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図のように、直線角Δと、三角形ΑΒΓが与えられたとする。このとき、角Δの中に、三角形ΑΒΓに等しい平行四辺形を作図したい。

参考文献の訳では「角Δの中に」と書かれているのだが、このあとの作図方法を見る限り、「角Δに等しい角の中に」である。角Δの中に直接平行四辺形を描くのではなく、角Δに等しい角をもつ平行四辺形を作図する。

 

まず辺ΒΓの中点Εを作図し*1、ΑΕを結ぶ*2

f:id:kigurox:20180204212006p:plain(ΒΕ=ΕΓ)

次に、線分ΕΓの上の点Εにおいて、角Δに等しい角ΓΕΖを作図する*3

f:id:kigurox:20180204212601p:plain(角Δ=角ΓΕΖ)

そして、点Αを通りΒΓに平行な直線と、点Γを通りΕΖに平行な直線を描き、その交点をΗとする*4

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(ΑΗ // ΒΓ、ΕΖ // ΓΗ、点ΖはΑΗ上にあるとする)

すると四角形ΖΕΓΗが、求める平行四辺形である。証明しよう。

まず、ΒΕはΕΓに等しいので、三角形ΑΒΕは三角形ΑΕΓに等しい。なぜなら、底辺が等しく、同じ平行線ΒΓ、ΑΗの間にあるからだ*5。したがって、最初に与えられた大きい三角形ΑΒΓは、三角形ΑΕΓの二倍だ。

ところで、作図した平行四辺形ΖΕΓΗも、三角形ΑΕΓの二倍だ。なぜなら、それと底辺が同じで、同じ平行線ΕΓ、ΑΗの間にあるからだ*6

ゆえに、ともに三角形ΑΕΓの二倍なので、平行四辺形ΖΕΓΗは三角形ΑΒΓに等しい*7。しかも、角Δに等しい角ΓΕΖを持つ。

よって、角Δに等しい角ΓΕΖの中に、与えられた三角形ΑΒΓに等しい平行四辺形ΖΕΓΗが作られた。これが作図すべきものであった。

 

冒頭で述べた通り、「与えられた角の中」というより「与えられた角に等しい角の中」に作図する方法である。

ただし、少し工夫すれば、確かに角の中に作図することもできる。辺ΒΓの中点Εを作図しΑΕを結んだあと、命題22「三線分を与えられた三角形の作図」を利用し、角Δの上に二つの三角形ΑΒΕ、ΑΕΓに等しい三角形を作図するのだ。

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この図で、ΑΒΕはΗΘΖに、ΑΕΓはΗΖΚにそれぞれ等しい。この状態で、先程の作図を三角形ΗΘΚ内で行えば、角Δの中に三角形ΑΒΓに等しい三角形を作図できる。

いまさらりと説明してしまったが、ユークリッド的にこの方法が正しいことを証明するのは、少し面倒くさい。次の一段落が必要になるからだ。

ΑΕΓとΗΖΚは三辺が等しいことから、角ΑΕΓと角ΗΖΚが等しい。すると二辺とその間の角が等しくなるので、ΑΕΓとΗΖΚは等しい。同様にしてΑΒΕとΗΘΖも等しい。よってΑΒΓはΗΘΚに等しい。

また、直線角Δを作る辺に名前を付けずに、この作図方法を説明するのは相当しんどい。さらにこの作図方法をユークリッド的に厳密に説明するのも、たぶんかなり面倒だろう。

それよりは、今回の作図方法を採用した方が、いくらか楽だ。ユークリッドもきっとそう考えて、この方法を採ったのだろう。

 

 

*1:命題10「与えられた線分を二等分すること」

*2:公準1「任意の点から任意の点へ直線をひくこと」

*3:命題23「与えられた直線上にその上の点において与えられた直線角に等しい直線角を作ること」

*4:命題31「与えられた点を通り、与えられた直線に平行線を引くこと」

*5:命題38「等しい底辺の上にあり、かつ同じ平行線の間にある三角形は互いに等しい」

*6:命題41「もし平行四辺形が三角形と同じ底辺を持ち、かつ同じ平行線の間にあれば、平行四辺形は三角形の二倍である」

*7:公理5「同じものの二倍は互いに等しい」