与えられた三線分に等しい三線分から三角形を作ること。ただしどの二線分をとっても、その和は残りの線分より大きくなければならない。
久々の作図題である。命題12以来だ。今回と次回が作図題で、命題24からまた定理に戻る。
しかも命題に但し書きがついてるという、珍しい命題だ。二線分の和が残りの線分より小さいと、そもそも三角形が描けないため、このように但し書きがしてある。
ちなみにこの命題、実は命題5の記事の中で、既に軽く触れていたりする。そこで触れた通り、中学でも習う内容だ。
さて、作図していこう。まずは図のように三線分Α、Β、Γが与えられたとする。
このとき、Α、Β、Γに等しい三線分を三辺とする三角形を作図したい。
まず、任意の半直線ΔΕを描く。その上に、線分Αに等しい線分ΔΖ、線分Βに等しい線分ΖΗ、線分Γに等しい線分ΗΘを作図する*1。
(ΔΖ=Α、ΖΗ=Β、ΗΘ=Γ)
そして中心Ζ、半径ΖΔをもって円ΔΚΛを描く*2。
さらに、中心Η、半径ΗΘをもって円ΘΚΛを描く*3。
最後にΚΖ、ΚΗを結ぶと*4、三角形ΚΖΗが求める三角形である。
理由はほぼ自明であろう。
点Ζは円ΔΚΛの中心なので、辺ΖΚは線分ΖΔに等しい*5。そして線分ΖΔは線分Αに等しいので、辺ΖΚも線分Αに等しい*6。
同様に、点Ηは円ΘΚΛの中心なので、辺ΗΚは線分ΗΘに等しい*7。そして線分ΗΘは線分Γに等しいので、辺ΗΚも線分Γに等しい*8。
さらに、辺ΖΗは線分Βに等しい(線分ΖΗは線分Βに等しい線分として、直線ΖΕから切り取ったのだった)。
ゆえに、三線分ΚΖ、ΖΗ、ΗΚは、三線分Α、Β、Γにそれぞれ等しい。
よって、与えられた三線分Α、Β、Γに等しい三線分ΚΖ、ΖΗ、ΗΚから三角形ΚΖΗが作られた。これが作図すべきものであった。
以前、命題5の記事でこの作図に触れたときは、「三辺が与えられた三角形は一通りしか作図できない」という文脈で紹介した。
しかし『原論』では、このような三角形がいくつ作れるかについては、何も言っていない。それにこのような三角形は、実際には少なくとも四つ描ける(上下反転で二つ、左右反転で二つ)。
『原論』で言わんとしているのは、とにかく与えられた三線分を三辺とする三角形が、少なくとも一つは作図できるということだ。そしてこの作図が、次の命題23を作図するのに必要になる。
命題23は、命題24以降で多用される重要な作図だ。今回の作図は、重要な作図をするための重要な作図である。