もし二直線が互いに交わるならば、対頂角を互いに等しくする。
「対頂角」という言葉は、定義には出てこなかった。「底辺」や「対頂角」などのごく一般的な単語は、定義されずに使われる場合があるようだ。
意味は現代と変わらない。二直線が交わるとき、点で接する角のことだ。
証明も、現代の中学校で習うものとそう変わらない。さらっと証明して終わりにしよう。
二直線ΑΒとΓΔが、点Εにおいて互いに交わっているとする。このとき、角ΑΕΓは角ΔΕΒに、角ΓΕΒは角ΑΕΔに等しいことを示そう。
直線ΑΕに注目すると、これは直線ΓΔの上に立ち、二角ΓΕΑ、ΑΕΔを作っている。ゆえにこの二角の和は二直角である*1。
また直線ΔΕに注目すると、これは直線ΑΒの上に立ち、二角ΑΕΔ、ΔΕΒを作っている。ゆえにこの二角の和も二直角である*2。
ともに二直角に等しいので、二角ΓΕΑとΑΕΔの和は、二角ΑΕΔとΔΕΒの和に等しい*3*4*5。双方から角ΑΕΔを引き去れば、残りの角ΓΕΑは残りの角ΔΕΒに等しい*6。
同様にして、二角ΓΕΒとΑΕΔが等しいことも示せる。
よってもし二直線が互いに交わるならば、対頂角を互いに等しくする。これが証明すべきことであった。
まあ、これがベストだろうな、という証明方法である。オレンジの角と緑の角が等しいので、両者の重なった部分を引いても等しいという証明だ。
両者をいきなり二直角とせず、わざわざ命題13を使って二角の和で表現しているのは、『原論』では直線を角と認めていないからである。これは、角の定義が、
定義8「平面角とは平面上にあって互いに交わりかつ一直線をなすことのない二つの線の相互の傾きである」
となっているためだ。
命題13も、今回の命題15も、これのせいで少々面倒な証明になってしまっていることは、以前にも述べた通りである。