オペレヴィ・ヴィクセ

ユークリッドの『原論』を少しずつ読んでいくブログです。タイトルは「Q.E.D.」の元になったギリシャ語の「όπερ έδει δείξαι.」。

第1巻命題14 二直角は直線

もし任意の直線に対して、その上の点において同じ側にない二直線が接角の和を二直角に等しくするならば、この二直線は互いに一直線を成すであろう。

 

前回の命題の逆である。

前回同様、文章だけだと何を言っているのかわかりにくいが、図を見れば一発でわかるだろう。

まず、直線ΑΒがある。

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直線上の点Βにおいて、同じ側にない二直線ΒΓ、ΒΔがある。

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このとき、角ΑΒΓと角ΑΒΔの和が二直角ならば、ΓΒとΒΔは一直線を成すと言っている。

そりゃそうだろう、と言いたくなる。

だがそれは、「180°=直線」だと知っているからである。この命題は、それを証明するものである。

 

早速証明しよう。前回ほどはややこしくない。

証明には背理法を使う。ΓΒとΒΔが一直線を成さず、ΓΒとΒΕが一直線を成すとして、矛盾を導こう。

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直線ΑΒは直線ΓΒΕの上に立つから、角ΑΒΓ角ΑΒΕの和は、二直角に等しい*1

ところが命題の仮定では、角ΑΒΓ角ΑΒΔの和も二直角に等しいのであった。

ゆえに角ΑΒΓ角ΑΒΕの和は、角ΑΒΓ角ΑΒΔの和に等しい*2

双方から角ΑΒΓを引くと、残りの角ΑΒΕ角ΑΒΔに等しい*3。すると小さいものが大きいものに等しくなってしまう。これは不可能である。ゆえに、ΒΕはΓΒと一直線を成さない。

同様にして、ΒΔ以外のいかなる直線もΓΒと一直線を成さないことが示せる。ゆえにΓΒはΒΔと一直線を成す。

よって、もし任意の直線に対して、その上の点において同じ側にない二直線が接角の和を二直角に等しくするならば、この二直線は互いに一直線を成すであろう。これが証明すべきことであった。

 

下線部の部分が、ちょっとよくわからない。私の感覚からすると、ΒΕは一般的な直線なので、この宣言は不要なはずだ。

ネットで少し調べたところ、どうやらこの文言は、「ΒΕが図の位置(ΒΔに対してΑの側)になくても成立する」ということを主張したいらしい。

たしかに、直前の「残りの角ΑΒΕ角ΑΒΔに等しい。すると小さいものが大きいものに等しくなる」という文章の書き方からすると、「小さい角ΑΒΕが大きい角ΑΒΔに等しいので矛盾」と考えているようにも見える。

しかしそうだとすると、ΒΕの取り方について、最初に宣言しそうなものである。だが少なくとも参考文献の文章には、そのような記述はない。

背理法を使っているため、ΒΔ以外のどんな直線でも同じ議論が成り立つことを強調したかったのかもしれない。しかし背理法ならこれまでにも何度か使っているが、このような宣言をしたことはない。

色々考えはしたのだが、残念ながら私の中で結論は出ていない。いずれちゃんと調べよう。

 

よくわからないと言えば、「小さいものが大きいものに等しい。これは不可能である」という表現も妙だ。「不等なものが等しくなるので矛盾」と言えば十分なはずだ。この言い方は、命題6でも登場していた。

stoixeia.hatenablog.com

もしかしたらユークリッドには、
不等
 ⇒ どちらかは大きい
 ⇒ どちらが大きいのか、はっきりさせないといけない
という意識があったのかもしれない。今後の命題を読んでいけば、何かわかるだろうか。

 

余談だが、今回の図は、『原論』に登場する図と、向きを変えてある。『原論』の図は、直線ΓΒΔが下にあるのだ。

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ただ、これだと「最初にあるのはΑΒ」ということが分かりにくいかなと思って、図の向きを変えた。

これまではなるべく『原論』の図に合わせていたが、今後はちょくちょく見やすさを優先して変えていくかもしれない。

もっとも、図をカラフルにしている時点で、『原論』とは全く異なるのだが。

 

(追記2017/11/16)

そういえば今回の証明には、顕わではないが公準4「すべての直角は互いに等しいこと」が使われている。

角ΑΒΓ角ΑΒΕの和が、角ΑΒΓ角ΑΒΔの和に等しいと言うとき、両者がともに二直角であることを根拠にしていたが、公準4がなければ「ともに二直角でも等しいとは限らない」という反論を許してしまう。

すべての直角が互いに等しく、しかも等しいものの二倍は互いに等しい(公理5)ので、すべての二直角も等しいことが言える。

……厳密な議論をするというのは、なかなか難しいものだ。

 

 

*1:命題13「もし直線が直線の上に立てられて二つの角を作るならば、二つの直角か、またはその和が二直角に等しい角を作るであろう」

*2:公理1「同じものに等しいものはまた互いに等しい」

*3:公理3「等しいものから等しいものが引かれれば、残りは等しい」