オペレヴィ・ヴィクセ

ユークリッドの『原論』を少しずつ読んでいくブログです。タイトルは「Q.E.D.」の元になったギリシャ語の「όπερ έδει δείξαι.」。

第1巻命題13 直線は二直角

もし直線が直線の上に立てられて二つの角を作るならば、二つの直角か、またはその和が二直角に等しい角を作るであろう。

 

この命題は、文章だけでは意味がわかりにくい。だが図を見れば一発でわかるだろう。

まず、直線ΓΔがある。

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この上に、直線ΑΒを立てる。

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このとき、二角ΔΒΑ、ΑΒΓはともに直角か、その和が二直角(直角の二倍)だと言っているのだ。

当たり前である。

だがここで当たり前だと感じるのは、「直線=180°」という常識を知っているからである。しかしこの常識がなぜ正しいかと聞かれたら、すぐに答えられるだろうか?

その答えが、この命題である。これから、この常識を証明しよう。

証明の前に、ひとつだけ注意。現代なら上の図で、
 角ΔΒΓ=180°
などと表記することもあるが、『原論』では180°(二直角)の角は、角として認められていない。というのも、角の定義が、
 定義8「平面角とは平面上にあって互いに交わりかつ一直線をなすことのない二つの線の相互の傾きである」
だったからだ。そしてこのせいで、回りくどい証明をするはめになる。

 

では証明しよう。二つの角ΔΒΑとΑΒΓが等しい場合と等しくない場合に、場合分けして考える。

まず二つが等しい場合、直角の定義から、これらは二つの直角である*1。よって等しい場合は、たしかに命題は正しい。

次に、二つが等しくない場合を考えよう。

補助線として、点Βから直線ΔΓに垂線ΒΕを引く*2

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すると、角ΓΒΕ角ΕΒΔは、ともに直角である。示したいのは、角ΓΒΑ角ΑΒΔの和が二直角に等しいことだ。

証明は3ステップに分けて行われる。

第1ステップ。
角ΓΒΕは、ΓΒΑ角ΑΒΕの和に等しい。
双方に角ΕΒΔを加えると、角ΓΒΕ角ΕΒΔの和は、三角ΓΒΑΑΒΕΕΒΔの和に等しい*3

第2ステップ。
角ΑΒΔは、角ΑΒΕ角ΕΒΔの和に等しい。
双方に角ΓΒΑを加えると、角ΓΒΑ角ΑΒΔの和は、三角ΓΒΑΑΒΕΕΒΔの和に等しい*4

第3ステップ。
以上から、角ΓΒΕ角ΕΒΔの和と、角ΓΒΑ角ΑΒΔの和は、ともに三角ΓΒΑΑΒΕΕΒΔの和に等しい。
よって、角ΓΒΕ角ΕΒΔの和と、角ΓΒΑ角ΑΒΔの和も等しい*5
ところで、角ΓΒΕ角ΕΒΔは二つの直角であった。ゆえに角ΓΒΑ角ΑΒΔの和は二直角に等しい。

これで、二角ΓΒΑΑΒΔが等しくない場合も、命題が正しいことが示せた。

よって、もし直線が直線の上に立てられて二つの角を作るならば、二つの直角か、またはその和が二直角に等しい角を作るであろう。これが証明すべきことであった。

 

数式で書けば、少しはわかりやすいだろうか?

第1ステップ。
角ΓΒΕΓΒΑ角ΑΒΕ
角ΓΒΕ角ΕΒΔΓΒΑΑΒΕΕΒΔ

第2ステップ。
角ΑΒΔ角ΑΒΕ角ΕΒΔ
角ΓΒΑ角ΑΒΔΓΒΑΑΒΕΕΒΔ

第3ステップ。
以上から、
 角ΓΒΕ角ΕΒΔ
ΓΒΑΑΒΕΕΒΔ
角ΓΒΑ角ΑΒΔ
ところで、
角ΓΒΕ角ΕΒΔ=二直角
よって、角ΓΒΑ角ΑΒΔ=二直角


このような回りくどい証明になっている理由は、二直角を角として認めていないからである。ΓΒΕΕΒΔが二直角であり、ΓΒΑΑΒΔはそれに重なり合っているから等しいである、という論法が使えないのだ。二直角は角ではないから。

それにしたって、もっと短い証明がありそうな気もする。何かうまい方法はないだろうか?

 

 

*1:定義10「直線が直線の上に立てられて接角を互いに等しくするとき、等しい角の双方は直角であり、 上に立つ直線はその下の直線に対して垂線と呼ばれる」

*2:命題11「与えられた直線にその上の与えられた点から直角に直線を引くこと」

*3:公理2「等しいものに等しいものが加えられれば、全体は等しい」

*4:公理2「等しいものに等しいものが加えられれば、全体は等しい」

*5:公理1「同じものに等しいものはまた互いに等しい」