与えられた無限直線にその上にない与えられた点から垂線を下ろすこと。
前回は直線上の点を通る垂線で、今回は直線外の点を通る垂線である。
直線ΑΒと、直線上にない点Γが与えられたとき、点ΓからΑΒに垂線を下ろしたい。
まず、直線ΑΒに関して、点Γと反対側に任意の点Δを取る。
そして中心Γ、半径ΓΔの円を描き*1、ΑΒとの交点をΗ、Εとする。
線分ΗΕを点Θで二等分し*2、ΓΘを結べば*3、ΓΘが求める垂線である。
証明のために、補助線を引こう。ΗΓ、ΕΓをそれぞれ結ぶ*4。
ここで二つの三角形ΓΘΗとΓΘΕに注目すれば、辺Ηθ=辺ΕΘであり、辺ΓΘは共通、そして円の半径なので底辺ΓΗ=底辺ΓΕである*5。よって二辺と底辺がそれぞれ等しいので、角ΓΘΗは角ΕΘΓに等しい*6。しかも接角である。よって直線ΓΘは直線ΑΒの上に立てられて、接角を等しくしているので、直角の定義から角ΓΘΗと角ΕΘΓは直角である*7。
よって与えられた無限直線ΑΒにその上にない与えられた点Γから垂線ΓΘが下ろされている。これが作図すべきものであった。
作図の途中で、ΗΕの中点を作図している。これは命題10「与えられた線分を二等分すること」を使っているが、以前にも触れた通り、命題10の二等分線は結果的に垂直二等分線になっている。
つまり、中点Θを作図した時点で、(数学的にはともかく)実際的には作図が完了しているのである。
この命題でそのような扱いをしていないのは、命題10があくまで「中点の作図方法」であり「垂直二等分線の作図方法」ではないからだろう。また、作図された直線が点Γを通ることの証明が難しいからかもしれない。
ところで、この作図では最初に、点Γの反対側に点Δを取っている。私はこれを初めて読んだとき、ちょっと感動を覚えた。
中学校でこの作図を習ったときは、「コンパスを適当なサイズに開き、点Γを中心とする円を描く」と教わったと記憶している。
ところがこの方法では、場合によっては円と直線が交わらず、作図に失敗するのである。
(失敗例)
しかし『原論』で説明されているように、まず直線ΑΒの向こう側に点を取って(つまり、直線ΑΒをまたぐようにコンパスを開いて)円を描けば、絶対に円と直線が二点で交わるのである。
考えてみれば当たり前のことなのだが、中学時代の私は全く気付かなかった。たぶん、何も考えていなかったのだろう。