与えられた直線角を二等分すること。
与えられた直線角を角ΒΑΓとせよ。このときそれを二等分しなければならぬ。
この命題は、なぜか命題中に特述が書かれている。理由は知らない。
命題3以来の、久々の作図題である。実は『原論』の第1巻は、作図題と定理が交互にまとまって登場する。
作図題で作図可能な図形を示す→それらを使って定理を証明する→定理を使って新たに作図可能な図形を示す→それらを使ってまた新たな定理を証明する→……
という流れになっているのだ。ここから先は、命題12まで作図題が続く。
今回は角の二等分の作図だ。方法は現代の中学校で教わる内容とほぼ同じだ。角ΒΑΓをさらっと二等分して終わりにしよう。
さていま、図のように直線角ΒΑΓがある。ΑΒ上に任意の点Δを取り、ΑΓからΑΔに等しい線分ΑΕを切り取ろう*1。次にΔΕを結び*2、線分ΔΕ上に等辺三角形ΔΕΖを描く*3。
そしてΑΖを結べば*4、角ΒΑΓは線分ΑΖによって二等分される。
証明も簡単である。
二つの三角形ΔΑΖとΕΑΖに注目すると、辺ΔΑは辺ΕΑに等しく、ΑΖは共通なので、二辺が等しい。また三角形ΔΕΖは等辺三角形なので、ΔΖとΕΖも等しい。よって二つの三角形において、二辺が二辺にそれぞれ等しく、底辺も底辺に等しいので、等しい二辺に挟まれた角ΔΑΖは角ΕΑΖに等しい*5。
よって与えられた直線角ΒΑΓは、線分ΑΖによって二等分されている。これが作図すべきものであった。
現代の中学校では、「等辺三角形を描く」とは習わないはずだ。「点Δを中心に任意の半径の円を描き、それと同じ半径で中心Εの円を描き、その交点をΖとする」と習った記憶がある。つまり二等辺三角形を作図するのだ。
別にどちらでも良いが、『原論』的には、二等辺三角形を描こうと思うと命題2の面倒くさい作図*6をしなくてはいけなくなる。それよりは等辺三角形を描いた方が、作図にかかる労力が少なくて済むのだろう。
ところで今回の記事を書いているとき、この作図は以下のようにしてもよいのだな、と気が付いた。
だからどうした、という話ではないのだが。