オペレヴィ・ヴィクセ

ユークリッドの『原論』を少しずつ読んでいくブログです。タイトルは「Q.E.D.」の元になったギリシャ語の「όπερ έδει δείξαι.」。

第1巻命題8 三角形の合同条件(三辺相等)[本編]

もし二つの三角形において二辺が二辺にそれぞれ等しく、底辺も底辺に等しければ、等しい辺に挟まれた角もまた等しいであろう。 

 

現代人から見ると、かなり妙な命題である。

まず、三角形の三辺を、どういうわけか底辺とそれ以外の二辺に分けて考えている(これは今までもそうだったが)。

そして「三角形が等しいであろう」ではなく、「等しい辺に挟まれた角もまた等しいであろう」と言っている。角にしか言及していない。しかも、等しい辺(底辺以外の二辺)に挟まれた角だけで、他の二角には一切触れていない。

このあたりのことから、ユークリッドの時代には「合同」の概念が未確立だったと考えられているようだ。二辺夾角相等のときにも妙な言い回しをしていたのは、このへんの事情が原因なのかもしれない。

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証明は簡単である。

二つの三角形ΑΒΓ、ΔΕΖがあり、二辺が等しく(ΑΒ=ΔΕ、ΑΓ=ΔΖ)、底辺も等しい(ΒΓ=ΕΖ)とする。このとき、角ΒΑΓ=角ΕΔΖであることを示す。

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この二つの三角形を重ねよう。点Βを点Εに重ね、底辺ΒΓを底辺ΕΖの上に置くと、ΒΓとΕΖは等しいので、点Γと点Ζも重なる*1

すると、ΑΒとΔΕ、ΑΓとΔΖも重なるはずである。

なぜなら、もしΑΒがΔΕと重ならなず、ΗΕのようにずれるとすると、下図のようになる。

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だが、ΕΔ=ΕΗ、ΖΔ=ΖΗのとき、このようになることはあり得ない。このことは前回の命題7で証明した*2。ゆえにΑΒとΔΕ、ΑΓとΔΖは重なるであろう。

等しい二辺が重なるので、その二辺に挟まれた角ΒΑΓと角ΕΔΖも重なり、等しいであろう*3

よってもし二つの三角形において二辺が二辺にそれぞれ等しく、底辺も底辺に等しければ、等しい辺に挟まれた角もまた等しいであろう。これが証明すべきことであった。

 

今回の証明では命題7を使ったが、命題7の証明には命題5(二等辺三角形の底角は等しい)が、そして命題5の証明には命題4(二辺夾角相等)が使われていた。

ということは、「三辺が等しければ合同」という定理は、間接的に「二辺とその間の角が等しければ合同」に因っていることになる。

合同条件の証明に合同条件が必要というのは、ちょっと面白い。

 

*1:公理7「互いに重なり合うものは互いに等しい」

*2:命題7「ひとつの線分を底辺として、三角形を成す二線分にそれぞれ等しく、同じ側に異なった点で交わり、最初の二線分と同じ端を持つ他の二線分を作ることはできない」

*3:公理7「互いに重なり合うものは互いに等しい」